「料理をする人を増やす研究所」キックオフ

長年温めてきた「料理をする人を増やす研究所」がついにキックオフ!
醤油・味噌の生産者、パン屋、農家、調理器具メーカー、スーパーマーケット協会など、食に関わる多彩な仲間12名が集まりました。 歴史や社会の変化から「なぜ人は料理をしなくなったのか」を紐解き、義務や正しさではなく「料理って楽しくてカッコいい!」という憧れの空気を未来へ届ける、新たな挑戦の幕開けをお届けします。
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多彩な12人が集結!
「日本人はいつから料理をしなくなったのか?」
10月16日、「料理をする人を増やす研究所」が、いよいよ動き出しました。
集まったのは12人。
醤油や味噌の生産者、パン屋さん、農家、鉄鍋の営業担当者、スーパーマーケット協会の方など、実に多彩な顔ぶれです。
共通しているのは、みんな「食」に関わっていること。
でも、料理に対する考え方も、日々の暮らし方も、それぞれ違う。
だからこそ、おもしろい。
まずは私から、
「日本人は、いつから料理をしなくなったのか?」という話をしました。
時計の針を、1950年代まで巻き戻します。
当時、家庭の炊事は、主に女性の仕事でした。
かまどに火を起こし、羽釜でご飯を炊く。
水を汲み、野菜を洗い、火加減を見ながら料理をする。
毎日の炊事は、かなりの重労働だったはずです。
そこへ、電気炊飯器や冷蔵庫、洗濯機などの家電製品が登場します。
家事の負担は劇的に軽くなりました。
これは、素晴らしい進歩です。
ところが、便利になった先に、何が起こったのでしょうか?
私が最も尊敬する女性の一人に、食卓の変化を長年研究されてきた岩村暢子さんがいます。
著書『日本人には二種類いる』(新潮新書)では、
世代による価値観や暮らし方の違いが1960年に大きな『断層』がある事が書かれています。
すっごく面白い、いや勉強になるので、是非、読んでみてほしい一冊です。
以前、私は岩村さんに尋ねたことがあります。
「なぜ、日本人は料理をしなくなったのでしょう?」
そのとき教えていただいたキーワードが、
「ファン・モラリティ(Fun Morality)」でした。
人生を楽しむことに価値を置く、楽しい事を優先する考え方です。
かつての日本では、我慢、忍耐、勤勉、努力が美徳とされてきました。
ところが高度経済成長期になると、
暮らしに余裕が生まれ、余暇を楽しむという価値観が急速に広がっていきます。
国もレジャーの振興を後押ししました。
「もっと暮らしを楽しもう! 家族で出かけよう!」
そんな時代がやってきたのです。
もちろん、楽しむことは悪いことではありません。
むしろ、素敵なことです。
料理をしなくても困らない社会。
手ごわい課題と自由な対話
1960年代から70年代にかけて、外食産業が発展し、ファミリーレストランやファストフードが広がっていきます。
さらに、持ち帰り弁当、コンビニのおむすび、スーパーのお惣菜、冷凍食品。
誰かが作ったものを買って食べることが、どんどん身近になりました。
アンド今や、日本は世界に誇る美食の国。
外食、グルメ、食べ歩き、食レポ……。
食べることを楽しむ文化は、驚くほど豊かになりました。
でも、その一方で、自分で料理をすることは、どうなったのでしょう?
かつては、料理上手であることが結婚相手に求められる条件の一つでした。
今は、料理ができなくても、生きていけるし、全く困らない。
もちろん、結婚の条件にすらならないと思う。
それどころか、忙しい毎日、料理をしない方が合理的だと考える人もいるでしょう。
つまり、私たちは、料理をしなくても暮らせる社会をつくってきたのです。
料理をする人が減ったのは、単に人々が怠け者になったからではない。
料理をしなくても、おいしいものが食べられる。そんな便利な社会が実現したということでもあります。
だとしたら、料理をする人を増やすのは、なかなか手ごわい!
ここから、参加者とのフリートークが始まりました。
毎日、ものすごく料理をする独身男性。
子どもの頃、母親がつらそうに料理をしていた姿が記憶に残っている人。
料理をすることが楽しくて仕方ない人。
スーパーマーケットでは、惣菜と冷凍食品が1-2を占めているという話にも、みんな興味津々。
次々と話が飛び出し、あっという間に時間が過ぎていきました。
責めない、義務にしない。
「料理をすると人は幸せになる」という仮説
今回のミーティングでは、
「どうすれば料理をする人が増えるか」という具体策を決めるつもりはありませんでした。
まずは助走。
いえ、素振り練習のようなものです。
ただし、一つだけ、大切にしたいことがあります。
料理をする人に「○」、しない人に「×」をつけないこと。
料理をしない人を責めることからは、何も始まりません。
料理をしないからといって、自分の身体や家族の健康を大切にしていないわけでもありません。
料理をすることを義務にしたり、正しさを押しつけたりする研究所にはしたくないのです。
では、私たちは何を伝えたいのでしょう?
私は、こんな仮説を持っています。
「料理をすると、人は幸せになるのではないか?」
おいしいものを食べると、思わず笑顔になります♫
おいしい食材に出会うと、誰かと一緒に食べたくなります♫
旬の野菜を見つけて、今日は何を作ろうかと考えるだけで、楽しい♫
誰かの喜ぶ顔を思い浮かべながら、台所に立つ。
もちろん、自分のために作る一皿だっていい。
そんな小さな幸せを、自分の手で生み出せるのが料理ではないでしょうか。
料理は、単に空腹を満たすための作業ではありません。
食材を選び、組み合わせ、手を動かし、誰かと食卓を囲む。
そこには、買って食べるだけでは得られない喜びがあると、私は思っています。
「料理ってカッコいい!」
楽しさの文化を未来へ紡ぐスタート
ミーティングでは、こんな意見も出ました。
「スポーツの普及活動って、いい成功例じゃないのかな?」
なるほど!
かつては一部の人だけが楽しんでいたスポーツも、地道な普及活動によって、見る人、応援する人、実際にプレーする人の輪が広がってきました。
ワールドカップに熱狂し、選手に憧れ、自分もやってみたいと思う。
スポーツって、おもしろい!
スポーツって、かっこいい!
そんな憧れや楽しさが、人を動かしてきたのです。
だったら、料理だって同じでは?
料理って、おもしろい!
料理する人って、かっこいい!
自分で作るって、なんだか幸せ!
そんな空気を、私たちがつくっていけばいいのではないか。
そうか、これだ!
料理をしなさい、と説得するのではなく、料理をしたくなる社会をつくる。
料理をすることが、特別な努力でも、面倒な義務でもなく、人生を楽しむ一つの方法になる。
かつて、楽しむことが暮らしの価値観を変えたのなら、今度はその「楽しさ」を料理に取り戻したい。
料理をしなくても生きていける時代だからこそ、料理をする喜びを伝えたいのです。
研究所の活動は、まだ始まったばかり。
答えはありません。
でも、違う仕事、違う経験、違う価値観を持った仲間たちと、同じ問いを持つことができました。
次回の定期ミーティングは、2027年1月を予定しています。
参加資格は、一応、40歳未満。
これからの食文化をつくっていく世代に、ぜひ加わってほしいと思っています。
「料理をする人を増やす研究所」。
さて、どんなことが始まるのでしょう。
※本記事は「note」より要約抜粋しています。
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