今年で13回目になる「三河醸しツアー」は、三河と知多半島の発酵・醸造蔵を訪ねる学びのツアーです。かれこれ、20年前、愛知県岡崎市の「まるや八丁味噌」を初めて訪問しましたことがこのツアーを始めるきっかけでした。
蔵に足を入れると、木桶の上に石積みされた様は、ピラミッド郡のようでした。
浅井信太郎社長から仕込みの説明を受け、「なんて素晴らしい味噌なんだろう!」と
めちゃめちゃ、感動しました。
次の訪問先、碧南市の日東醸造まで、浅井社長が車で送って下さることに。車中、三河発酵醸造文化について話を伺うことに。とにかく、興奮がおさまらない。
それは、当時、発酵醸造については、詳しい方だと自負していた私。
「百聞は一見にしかず」とはまさにこのことだ。
教科書やネットで見るものとは、迫力も理解力も全く違う。蔵の匂い、空気、全てホンモノ。
日本人であれば、ホールフードを学ぶものであれば、発酵醸造の現場を自分の目で見るべきではないか、いや、見ないことには始まらないぞ!とまで思うようになっていた。
たった「まるや八丁味噌」の蔵を見ただけでだ。
日東醸造に着いた頃には、ほぼ醸しツアーのたたき台は頭の中に出来ていた。
浅井さんは、「蜷川さん、ツアーをやってみたいそうだよ、手伝ってあげてね」
神の声!上下関係、いや主従関係が今なお残る三河地方では、先輩の言うことは絶対なのだ。
蜷川さんは「わかりました、なんとかします」
翌年から「三河醸しツアー」が開催され、10回目は、コロナ禍の真っ最中でしたが、
私と蜷川さんの2人だけの「オンライン三河醸しツアー」を制作し、醸しツアーの灯を消すもんかと踏ん張りましたね〜。
発酵・醸造のブームで、蔵見学ツアーも増えていますがホールフード協会によるツアーは
とにかく濃くて熱い。
1日目は
「まるや八丁味噌」から三河みりん「角谷文治郎商店」日東醸造、お昼ご飯は
「和食のいろは」「プロに学ぶおせち料理」の講師、日本料理「一灯」で長田勇久料理長の
料理を頂ける。そして、お宿は、三河湾に浮かぶ「日間賀島」に海上タクシーで渡り、でふぐとタコを澤田酒造の日本酒をあびながらいただける。
2日目は、
日の出をホテルから拝み、海の幸いっぱいの朝ご飯をいただき、知多半島のたまり醤油と豆味噌の「南蔵」と「中定商店」を訪問。お昼は、郷土料理「手こね寿司」を堪能し、「白老」ブランドでお馴染みの「澤田酒造」訪問し、日本酒の仕込み、酒のテイスティングが旅の締めとなる。
このツアーの特色は、ただの蔵見学ツアーと訳が違います。
ツアーガイドが、日東醸造の蜷川洋一社長。バスの車中、事前に「蔵の予習」「蔵主のエピソード」まで、訪問前に、参加者の関心がアゲアゲに。
その説明の正確さと楽しさは、もしかしたら、「ツアーの肝」「最大の魅力」ではないかと思います。
蜷川さんのトレードマーク、顔クシャクシャになる笑顔!
毎回、ツアーの準備から、当日のやりくり、ほとんど、旅行代理店並み。最近では、
ご自身でも、「ツアーガイドが本業で、白醤油も作れます」になっておられる程。
訪問先の蔵主さんたちと信頼関係があるからこそ。
蜷川さんは、先輩をたて、後輩を引き上げ、ツアー中、ずっと顔クシャクシャです。
私は、もう20回以上、同じ蔵を訪問しています。
でも、毎回、新しい発見があり、「えっ、そうだったんだ・・・」と唸ること多々。
発酵食ブームは、今や、日本よりアメリカや海外の方が盛り上がっていると感じる。
世界では、発酵=調理工程のひとつとして取り入れているシェフも少なくない。
日本は、身近に発酵食があるから、奇抜なアイデアも浮かばなしし、最もいけないのは
「知ったかぶり」がなんと多いことか・・・・私を含め、知ったかぶってはいけない。
発酵食=健康・美容食として関心を持っている人が多いことにも残念。
「発酵食」は、日本の伝統的な食文化であり、そこには、原料となる米や水、田んぼ、
環境を守る、木桶やたがを作る職人を育てるという壮大な「守り」の文化を繋げていく
日本人の任務があるのだ。
この一連の繋がりを教えてくださったのが三河醸しツアーで訪れる蔵主の皆さんでした。
私が今、「ホールフード」と言う訳わからん、「まるごと考えること」の大切さを料理を作ることで気づいてほしいと思うようになったのは、三河の生産者を20余年見てきたからです。
うんと昔に、角谷文治郎商店の角谷さんに教えられたこと、
「私たちは米の味やブランドしか見えていない。田んぼの風景にどれだけ癒されているか。
みりん屋は米があってのこと。だから米を、田んぼを残すために、ホンモノのみりんを
作り続ける」
私、痺れましたよ、このフレーズに。その通りだと。米あってのみりん、日本酒、
大豆あっての味噌、醤油。忘れてはいけないのです。
ツアー参加された方は、食に対する姿勢、環境に対する考え方、ひと皮剥けます。
単なる発酵食でない別の魅力を掴んで帰られるのです。だから、何回もツアーに参加する人
も少なくないのです。
三河醸しツアー前日には、「シークレットツアー」を密かに開催しています。限定5名様というレアなもの。
遠方過ぎてツアーに組み込めない、日東醸造のしろたまりの仕込み蔵「足助蔵」を訪ねます。
案内役は、もち、蜷川さん!助手はタカコナカムラ。
足助村の温泉、日本酒蔵を巡り、山里にある築200年の古民家北小田の家に宿泊します。
ジビエの鍋と日本酒。満天の星に感激です。
命の洗濯っていうのは、こういう時間を過ごすことなのかと、布団の中の湯たんぽの温かさに癒されます。特典:蜷川さんの寝息、聞けます!
「三河醸しツアー」の各蔵では、実にいい感じで世代交代が行われつつあります。こんなに後継者が育っている地域は他にはありません。
なぜでしょう?それは、真っ当な親の背中を子供たちは見て来たからです。
発酵・醸造に人生をかけ、愛情を注いでいる親の姿を見て来たからです。
赤の他人の私も、皆さんの弛まない努力と背中を見て来たからこそ、どんな苦境のときも
這い上がってこれたのだと思います。
さあ、蜷川さんのクシャクシャの笑顔と三河の発酵の聖地を自分の目で見に行きませんか?
*シークレットツアーの申し込みは、事務局まで。
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